【刀剣乱舞】プチ小説「馴れ合いと引き合い その3」

燭台切光忠(しょくだいきりみつただ)を怒らせてしまった大倶利伽羅(おおくりから)。そのあと落ち着いたものの、大倶利はすこしびくついていた。結局作業は我先に終えると思っていたはずが、終わるまで神経をすべての方角に向けていたため、気を休める暇すらなく終えたのであった・・・。

 

「ふぅ・・・。」

「お疲れ様。はい、お茶と握り飯。」

「?・・・俺は頼んでないぞ?」

「これは僕が作りたくて作ったんだ。作業の後だから疲れているんじゃないかなと思ってね。」

 

確かに光忠の作った握り飯は、綺麗なさんかくに握られていて、軽く塩をまぶしただけであろうに、ついつい唾を飲み込んでしまうくらいの美味しそうな見た目だった。

 

「よだれ・・・でてるよ?」

「っ?!・・・(フキフキ)・・・食ってもいいのか?」

「どうぞ。」

 

その握り飯を口に含んだとき、大倶利は思った・・・ヤベェ、これマジうめぇ・・・と。

 

「美味しいかい?」

「・・・不味くはない・・・。」

 

すこし顔を赤らめながら、ぶっきらぼうに答えた。

 

「そうかそうか、すごく美味しいんだな!」

「っ?!。俺は不味くないとしか言ってないぞ?!」

「でもその”不味くない”握り飯、あの田んぼで出来た稲で作ったんだよ。」

「・・・そうなのか?。」

「うん。僕は前の年の、つまりこの握り飯のお米ができるときはまだこの母屋にはいなかったからわからないけど、でも食べてみると、味からこの稲を育てた人の愛情や丁寧さが感じ取れるんだ。雑ならどんなに美味しい炊き方をしてもベタッとしてあまり美味しく感じないからね。」

「・・・そういうものなのか、これが愛情の味。」

 

もう一口、握り飯をくわえた。愛情、かどうかはわからなかったものの、素直に(美味しい)、そう感じることができた。もしかするとこれが作った人の愛情・・・大倶利は薄らぼんやりと頭の中で思いながら、残りを綺麗に平らげたのであった。そして大倶利は少し、光忠のことが分かった気がした。

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